新宿校Kart Lecture Room Project
藤原彩人「像ヲ作ル術」

展示概要文（案内文、主催者挨拶文）

Gallery Kartでは、これまで社会の第一線で活躍するアーティストによる"Kart Invitation Program"、さまざまな分野の研究者、クリエーターによるワークショップやレクチャーなど、多くの教育研究関連プログラムを開催して参りました。今回、それらの中で、展示とレクチャー両軸のつながりを強化し、より具体的なディスカッションに重きを置いた"Kart Lecture Room Project"を新たに提案いたします。この試みによりギャラリーを、作家の思考と活動をさらに深く理解する場「Lecture Room」とすることを目的としています。

今回のプロジェクトでは、陶を用いた人物彫刻により注目を集め、東京芸術大学などで教育の現場にも携わりながら、多角的な視点から現代における新たな彫刻表現の可能性を追求し、幅広く活躍する彫刻家、藤原彩人氏を招いた展示&トークを開催いたします。自立する人物の全身像の最新作の展示に加え、制作にまつわる関連資料やゲストを交えた複数の視点によるトークにより、藤原氏が生み出す彫刻、「像ヲ作ル術」、その全貌に迫ります。ぜひこの機会に御参加、御高覧ください。

作家コメント

私は人体立像を軸に「人がつくる存在感」をテーマに主に陶を素材として制作している。現代社会の中から映し出される人のイメージを彫刻として「生み出す」という感覚を大切に仕事している。

今回の展示では、その要素となるドローイングや写真、そして自身の作品（焼成前）を3Dスキャンし、縮尺を変えプリントしたオブジェクトなどを完成した立像とともに展示したいと考えている。自身も最初に彫刻を勉強した場所である美術予備校という場において、対象となる物体（モチーフ）との距離の取り方を学んだ記憶がある。それによって立体的に把握する新たな視点を見つける楽しさを知り、少しだけ理解できたように思えた気がした。彫刻を作る上で、観察する事はその要素を発見する基本である。それらを仮説と実験を重ね考察し具現化するために、様々な視点を見つける「距離の取り方」は重要であると思う。作る事に慣れないよう新たな視点を見つけ探究心を持って接することは、今でも彫刻家として確固たる軸となっている。

藤原彩人

作家略歴

1975年栃木県出身。2003年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。2007-2008年文化庁在外派遣研修員として英国ロンドン滞在（V&A美術館）。現在、東京藝術大学美術学部彫刻科、横浜国立大学理工学部建築都市・環境系学科、東京医科歯科大学歯学部歯学科、宇都宮大学教育学部　非常勤講師。また、これまでの活動の1つとして、継続的に彫刻のあり方に関心があり、教育現場に携わっている同世代の彫刻家、批評家、デザイナーによる展示とシンポジウムを通し、彫刻の考察を主題とした教育目的の活動を行うAGAIN-STや、アーティストと地域や行政との関わり、都市における立体作家の制作現場の維持とアーティストコミュニティーを確立するべく、同世代や他分野との関係を築いた一般社団法人A-PLUSの活動など、彫刻を軸としたプラットフォームの確立に関わっている。

近年の主な展覧会としては「未来を担う美術家達『DOMANI−明日』展2009＜文化庁芸術家在外研修の結果＞」文化庁主催(国立新美術館／東京 2009)、「みる,ふれる,きくアート−感覚で楽しむ美術−」（栃木県立美術館／栃木　2013）、「個展　空の景色と空な心／Scenery of the sky and Vacant mind」（gallery21yo-j／東京　2013）など国内外で多数。

今後の発表については2014年12月16日から2015年3月22日、静岡市立美術館にて、人体／彫刻とは何かをテーマとした3人展「Shizubi Project 4　ヒトのカタチ、彫刻」をひかえている。